魔法少女アリス


「そういえば、どうやって元の服に戻ればいいのかしら?」

    古式に則って、いちおう人形の供養をしたが、ひとつの疑問が残った。一応使い魔のようなものである「もも」は滅した。
    しかし、衣装は元に戻らない。杖もそのまま。先導するものはすでにいないのに、これだけ残されるのは正直きついものがある。
    誰かに見られても困るし。

「そんな疑問質問お答えしましょう」

    どこからとも無く、魂のようなももが現れた。こまんど?

「な!なんであんたがそこにいるの?」

「使い魔の魂は不滅です。といいたいところですが、そろそろ限界なので、今のうちにお願いします」

    もう二度と見たくは無いと思っていたが、この機会ばかりは、ちょうどいい。

「元に戻るにはどうすればいいの?」

「服を着替えてください」

「は?」

「いやだから、脱いでください」

「なんで?」

「実はその杖に施してある魔力回路の命令は、実は変身ではなくて、進化なのです。よってあなたが着ている服を元に、魔法少女風の服に仕立て直しました。ちなみに退化のプログラムは組んでないので、それはそのままです」

「もう一回消してあげましょうか?」

「そんな横暴ですよ。フィギュアはずっと友達ですよ? 変身のプログラムは本当に面倒なんですよ。うわ、痛くないのに痛い。討たないで〜」

    そんな悲鳴を上げて、ももの魂も消失した。
    今回の騒動での私の損失。
    魔理沙に押し付けられた整理券  魔道書一冊
    変身したことで消えた私の服   日本円にして約三万円
    私の生きるものとして尊厳    プライスレス

    暗闇の中、人型をした紙が一枚燃えて、灰となって舞っていった。

「あら返されちゃった……」

    八雲紫は燃え尽きた式紙を見て、心底残念そうな顔をした。手には返されたとき出来た小さい火傷がある。紫はそれを舐めながら、さっきまでの出来事を思い出す。
    盛と静の境界を弄ってみたり、こっちの妖怪が、普通は知りもしない知識を埋め込んでみたり、いろいろ水面下では白鳥並みにばたばた動いていたのだが、それを知る者は、本人しかいない。
    いい暇つぶしになった。出来ることなら、式を残して、そのまま保存するのもよかったが、引き際を誤り、その式は消失し、それを覚えているものは直接見ていた紫以外いない。

「ちょっとお遊びが過ぎたわね。最後の最後でばれるなんて……でもまぁ種はまかれたから、せいぜいあがいて伸びなさい。熟したら、刈り取ってあげるわ。だから、もうしばらく楽しませてもらうわよ」

    部屋には高笑いが響き渡る。事件はまだ始まったばかり。

「紫様〜御飯ですよ。ってうわ、部屋暗くしていったい何しているんですか? 変な遊びは橙に悪影響ですから控えてください」

「はいはい。それはもう耳にタコが出来るほど聞いたからそれ。それより今日は何? お酒はある?」

「今日は禁酒日です」

「え〜」

    それでも幻想郷はいつも通りだ。


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